ディジタル回路実験

Lab1: 直流回路設計(オームの法則、キルヒホフの電圧則、実験機器の取扱い)

直流回路設計を通して、デジタルマルチメータ等の実験機器の取扱いをマスターします。

実験1(オームの法則)

実験原理

オームの法則は抵抗(抵抗値R [Ω])に流れる電流I [A]と両端の電圧V [V]との間にある次の関係を表している。

V=               [V]

または

I=               [A]

または

R=               [Ω]



図1−1:抵抗の回路図記号と電流と電圧

実験目的

直流回路において、オームの法則が成立することを確かめる。

実験機材

実験手順

  1. (デジタルマルチメータによる測定)
    配布された抵抗の両端にデジタルマルチメータのケーブルを接続し、 抵抗値を測定し記録せよ。
    抵抗値の測定方法は、デジタルマルチメータの「抵抗測定レンジ(Ω)」を使用し、 抵抗測定レンジの値の小さい方から順にダイヤルを回し、最も精度よく測定できる (有効桁数ができるだけ大きくなる)レンジで測定すること。 実験や測定では特に有効桁数(有効数字)に気をつけること。
    デジタルマルチメータによる抵抗の測定値:R =               [Ω]
  2. (実際に抵抗に直流電流を流して測定)
    直流電源装置から一定の電圧を発生させ、ブレッドボード上に作成した測定回路上で抵抗を流れる電流と両端電圧からその抵抗の値を求める。
    1. 電源装置に何のケーブルも接続せず電源スイッチを入れ、電源装置のメーターを正面から見てちょうど 5.0 V になるように電圧調整ダイヤルを回して調整せよ。
      coaseと書かれた電圧微調整ダイヤルで最終的な電圧を調整すると良い。currentと書かれた最大電流調整ダイヤルは少しだけ時計周りに回しておくこと。
      電圧調整が終ったら、一旦、電源装置の電源スイッチを切ること。
    2. ブレッドボードの使用方法を、各机に置いてある「実験指導書」か、 「実験指導書(ホームページ版)」を見て確認し、次の回路を作る。
      このとき、電圧計と電流計はともにデジタルマルチメータで代用する。 デジタルマルチメータは、電圧を測定するときは「電圧測定レンジ(V)」を、 電流を測定するときは「電流測定レンジ(A)」を使用する。
      また、電源回路やデジタルマルチメータで使用するケーブルは、赤色を電圧が高い側、黒色 を電圧が低い側に使用すること。他の色のケーブルは自由に使用してよい。
    3. 作り終ったら接続に間違いがないか何度も確認せよ。
      (人間はいくら注意していても間違える動物である。絶対に自分を過信しないこと)


      図1−2:実験1の回路図
    4. 測定を開始する前に、抵抗R =1[kΩ]に流れる電流 I [A]と、抵抗の両端電圧 V [V]を予測せよ。 この時、流れる電流は小さいので単位は[mA]とする。
      (実験を開始する前に、結果を予測してから実際に実験を行なうことはとても重要である。 実験が失敗していても気づかず誤ったまま先に進むと、さらに大きな誤りを生むばかりでなく、 大きな時間のロスにもなる)
      抵抗を流れる電流の予測値: Ie =               [mA]
      抵抗の両端の電圧の予測値: Ve =               [V]

    5. 上記の結果をもとに、デジタルマルチメータを適切な測定レンジに設定せよ。
      デジタルマルチメータを使った電圧測定と電流測定は、さきほどの抵抗測定とは 逆に値の大きな方から順にダイヤルを回し、最も精度良く測定できる (有効桁数が大きくなる)レンジで値を読みとる必要がある。 よって、上記の予測値よりり少し大きい測定レンジにデジタルマルチメータを設定する)
      電流を測定するメータのレンジ:DC              [mA]レンジ
      電圧を測定するメータのレンジ:DC              [V]レンジ
    6. 電源装置の電源スイッチを入れ、抵抗に流れる電流、抵抗の両端電圧を測定せよ。
      このとき、デジタルマルチメータに表示される値が予想した値と大きく違う場合や、 焼損による異臭等が発生した場合にはすぐに電源スイッチを切り、 作成した回路に誤りがないかどうかを確認せよ。 特に焼損した場合にはその部品は使用できなくなる場合がある。 次に実験する人が迷惑するので、隠さずスタッフに必ず申し出ること。
      電流の測定値:I =               [mA]
      電圧の測定値:V =               [V]
    7. 抵抗、電流、電圧の測定値等をまとめよ。

      表1−1:実験1の測定結果
      電流 [A]電圧 [V]抵抗値 [Ω]
      予測値(理論値)   
      測定値(実測値)   
      誤差   
      予測値(理論値)は想定した値、またはそれから計算によって求めた値を記入する。
      測定値(実測値)は測定によって得られた値、またはそれから計算によって求めた値を記入する。

    8. この結果から、オームの法則が成り立つかどうかを確認せよ。
      また、予測値と測定値に誤差がある場合にはその原因について考察せよ。
    9. さらに、デジタルマルチメータで直接的に測定した時に得られた値とも比較し、 誤差があればその原因について考察せよ。

実験2(LEDの点灯)

実験原理

発光ダイオード(Light Emission Diode)は、ダイオードの1種である。
ダイオードはA(アノード)とK(カソード)の2端子をもつ素子である。 アノードからカソードには電流が流れるが(順方向電流)、カソードからアノードへは電流は 流れない(逆方向電流はほぼ0)。

一般的なダイオードは帯マークが示されており、それによってカソード端子がわかる。 また、回路図記号は次のとおりである。



図1−3:一般的なダイオードとその回路図記号

発光ダイオード(LED)は順方向電流が流れるときに発光するダイオードで、赤、緑、黄から はじまり最近は青色のLEDも存在するようになった。 これにより、光の3原色(R=赤、G=緑、B=青)がLEDによって作ることができ、 白色に発光するLEDも登場している。

発光ダイオードは一般に電線が細いか長い方がアノード、太いか短い方がカソードで、 回路図記号は次のとおりである。



図1−4:発光ダイオード(LED)とその回路図記号

発光ダイオード(LED)は順方向には大きな電流が流れてしまうので(ショートさせたのと同じ)、 小さな電圧であってもLEDを焼損し壊してしまう。つまり、しばらくまぶしく点灯した後に消え、 2度と点灯しなくなる。 よって、LEDの点灯にはLEDを流れる電流を制限する仕組みが必要ある。

実験目的

発光ダイオード(LED)を安定して点灯させる方法について習得する。

実験機材

実験手順

  1. ブレッドボード上に次の回路を作成せよ。電源装置の電圧は5[V]に設定する。


    図1−5:実験2の回路図

  2. 電源装置の電源スイッチを入れるとLEDが点灯するかどうか観察せよ。
    順方向の場合の結果:LEDは              (記述せよ)
  3. 一旦電源装置の電源スイッチを切り、ダイオードのアノードとカソードを 逆に接続し、電源スイッチを入れると点灯するかどうかを観察せよ。
    逆方向の場合の結果:LEDは              (記述せよ)
  4. 発光ダイオード(LED)を長期間安定して点灯させつづけるにはどうしたら良いか記述せよ。

実験3(キルヒホフの電圧則とLEDの電圧−電流特性)

実験原理

オームの法則とともに、キルヒホフの法則は基本中の基本の法則で、 この世の中のすべての電子回路はこれらの法則に基づいて設計されているほど重要である。

キルヒホフの法則には2つある。 その1つめとして「キルヒホフの電圧則」は次のとおりである。

キルヒホフの電圧則
閉回路(グルッと1周回ることのできる回路)の各部で発生・消費される電圧 V1, V2, ... Vn の和は0である。


図1−6:キルヒホフの電圧則

実験機材

実験手順

  1. 実験2で使用した回路をそのまま利用し、電源装置の端子電圧、発光ダイオード(LED)両端の電圧、抵抗の両端の電圧を測定せよ。
    各素子の両端の電圧測定は、デジタルマルチメータの電圧測定レンジを使用せよ。 この時、素子に直流電流が流れるとその逆方向に電圧が発生することに注意して、電圧値の正負に注意して デジタルマルチメータの赤、黒ケーブルを接続すること(右周りの電圧を正、左周りの電圧を負と考えると良い)。
  2. 測定結果を次の表1−2にまとめ、キルヒホフの電圧則が成り立つかどうかを確認せよ。
    また、誤差がある場合にはその原因について考察せよ。
    表1−2:実験3の測定結果(1)
    両端の電圧電圧の和 [V]成立する?しない? もし成立しない場合は誤差の理由
    電源装置 [V]LED [V]抵抗 [V]
    測定値(実測値)      

  3. 電源装置の電圧を5Vから大きくしたり小さくした場合についても各部の電圧を同様に測定し、キルヒホフの電圧則が成り立つかどうかを確認せよ。
    上記の5Vを中心に合計7点の電圧を各自で設定して測定すること。

    また、この回路に流れる電流値は抵抗に流れる電流値と一致するので、 測定した抵抗の両端電圧から計算して求めることができる (抵抗の値はデジタルマルチメータで測定した値を使え)。
    注:電源電圧は各自で決めて良いが、8Vを越えないように注意して設定すること。

    表1−3:実験3の測定結果(2)
    各部の両端の電圧電圧の和 [V]回路に流れる電流[mA]
    電源装置 [V]LED [V]抵抗 [V]
    電圧を上げた時1の測定値(実測値)     
    電圧を上げた時2の測定値(実測値)     
    電圧を上げた時3の測定値(実測値)     
    5Vのときの測定値(実測値)     
    電圧を下げた時1の測定値(実測値)     
    電圧を下げた時2の測定値(実測値)     
    電圧を下げた時3の測定値(実測値)     

  4. 上記の結果から、抵抗に流れる電流と両端電圧の特性(電流−電圧特性)、 および発光ダイオード(LED)に流れる電流と両端電圧の特性(電流−電圧特性)を 同じグラフ用紙にそれぞれ示せ。
    (測定点は●で示し、それらの間を滑らかな曲線で結ぶこと。軸には適当に値を記入せよ。)

    通常、グラフ用紙(方眼紙)は専用のものを使うが、実験指導書(ホームページ版)に掲載されているものを使用しても良い。




    [mA]




    0
    →電圧 [V]

    図1−7:抵抗および発光ダイオード(LED)の電流−電圧特性
    (抵抗は実線、発光ダイオード(LED)は破線で記入)

  5. グラフに描かれた抵抗の電流−電圧特性と、発光ダイオード(LED)の電流−電圧特性は明らかに形状が異なっている。
    抵抗はオームの法則に従っていることを確認せよ。 また、発光ダイオード(LED)はオームの法則には従わない理由とどのような特性なのかを、 実験終了後参考書等を利用して調べて報告せよ。

レポートの作成

上記の実験1〜3をレポートにまとめ提出せよ。

レポートの書き方は、各机に置いてある「実験指導書」を見るか、 「実験指導書(ホームページ版)」を参考にせよ。

実験はレポートを作成することによって終了する。 レポートは決められた体裁に従っていなければ、いくら内容が良くても受理されない。 また、実験結果とレポートは他人とまったく同じになることはありえない。実験は オリジナリティが大切であることを本レポート作成で習得すること。


2011.04.07.
fmiso at sist.chukyo-u.ac.jp