メディア工学実習
第1章:ディジタル回路の設計(その1)
たとえば、LED(発光ダイオード)は2つの状態「点灯」、「消灯」が実現できますが、これを7つ組合せて 8の字型に並べれば数字を表示できる表示板(「7セグメント表示器」といいます)になります。 また、きれいに碁盤の目のように並べればコンピュータディスプレイ装置のような表示器にもなります。 このような表示器は、多くのLEDの「点灯」、「消灯」を制御しなければ実現できません。
また、コンピュータの中も同様です。数値や文字を記憶するということは単純な2進数を覚えることと同じです。 2進数は「1」と「0」の文字によって表現され、それらを用いて加減乗除算等の演算を実行しています。
このように、「LEDの点灯・消灯」や「コンピュータ内の2進数の1と0」は2つの状態のうちどちらであるか(2者択一)を たくさん保持できれば多くの機能を実現することができます。 ディジタル回路は、このような状態を1つの信号線(電線)に「電圧がかかっている(H:High)」、 「かかっていない(L:Low)」という2つの状態で実現し、それを組み合わせることでたくさんの 論理動作を実現する回路のことをいいます。
現代ではソフトウェアだけは十分ではなく、ハードウェアを理解した技術者を社会は強く求めています。 それはソフトウェアではできない次のようなハードウェア(電子回路)の利点があるからです。
また、今までにない高速・高機能な製品を実現するためには、ソフトウェアだけでは限界があり、どうしてもハードウェアの
力を借りなければなりません。その逆に、ハードウェアではできないきめ細かい動作部分もあります。
ハードウェアだけではダメ、ソフトウェアだけでもダメ、ハードウェアとソフトウェアの両方を知り、
使いわけることができて初めて良い製品が実現できるのです。ぜひ、両方を使いこなせるようにしましょう。
つまり、回路上の信号線の状態と2進数の論理の間には、次のような関係があることにします。
電線の状態 | 2進数の論理 |
---|---|
電圧がかかっている(H:High) | 1 |
かかっていない(L:Low) | 0 |
それでは,主なゲート素子を紹介しましょう.
左側が各ゲート素子の回路図上のシンボルマーク、その下側が、動作を表す論理式、 右側が具体的な論理入力に対する出力を示す動作表です。
ゲート素子 | 74シリーズ型番 | 規格表 |
---|---|---|
AND | 74LS08 | 74LS08規格表 |
OR | 74LS32 | 74LS32規格表 |
NAND | 74LS00 | 74LS00規格表 |
NOR | 74LS02 | 74LS02規格表 |
NOT | 74LS04 | 74LS04規格表 |
EXOR | 74LS86 | 74LS86規格表 |
これらのICの多くは14本のピンを持ち、ICを動かすためには14番ピンに+5V(VCCと書きます),7番ピ
ンに0V(GNDと書きます)を接続する必要があります.他のピンがどのような機能を持っているかは
上記の規格表から調べましょう。
例えば、74LS00(NAND4つ搭載)はきり欠き部分を左にして上面から見ると次のようなピン配置になっています。
いきなり難しいこと!と思った人もいるかもしれませんが、2進数の世界は意外と簡単なことなのです。 早速説明していきましょう。
先にコンピュータのようなディジタル回路は「1(電圧がある)」と「0(電圧がない)」の 2状態で動いています。ここでは2進数1桁の加算器を作ることにします。
2進数の1桁の加算器の動作は次の通りです。
「2つの入力A、Bに0または1を入力すると、それらを加えた値をSに出力する。 もし桁上がりが発生した時には出力Cを1とする。」
次の図は、人間が行なう加算演算と、加算器の出力の関係を示しています。
さて、SとCはどのような回路で実現できるでしょうか。 順を追って説明しましょう。
加算器はAとBの入力の値によって出力S、Cの値は一意に決まる箱(ブラックボックス)です。 このブラックボックスの動作が回路動作で、それを表に表してみましょう。 この表を「動作表」といいます。
この表をじっと見てみると、何か気づきませんか? そぅ、出力SはEXORと同じ動作、出力CはANDと同じ動作なのです。 この回路を「半加算器(half adder)」といいます。
「下の桁から桁上げ信号C’も考慮し、2つの入力A、Bに0または1を入力とし、それらを加えた値をSに出力する。 もし桁上がりが発生した時には出力Cを1とする。」
まず、SとCの結果を実現するための回路動作を示す動作表を書きましょう。 先ほどよりも入力の組合せが増えていることがわかります。選択肢が1つ増えると、 組合せの数は2倍になることを思い出しましょう。
次は、この動作表を満足する回路を設計するのですが、これにはちょっとしたテクニックが必要です。
そのテクニックは「回路の簡単化」なのですが、その紹介は2年生の「ディジタル回路」や
「ディジタル回路実験」にお任せして今回は答えだけを示します(お楽しみにね!)。
回路図を各自で書き込んで下さい。そして動作表通り動作するかどうかを電線を追って確かめて下さい。
(回路図は信号が左から右に流れるように書くのが原則です。また、接触するところは●で塗らなければなりません)
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全加算器は1桁分の加算回路ですが、これを複数接続することで何桁の加算器もつくることができます。 次の図は4桁の2進加算器の例です。
CPUの中にはここで設計した加算器のような簡単で基本的な回路がたくさん入っています。
しかし、
それらが多数組合わさって複雑な動作をしているだけなのです。組合せは爆発的に増えるので、たくさんの
ことができるようになるわけです。
全加算器を複数接続することで何桁の2進数でも加算できることがそのことを物語っています。
CPUは携帯電話や炊飯器等の家庭電化製品で活躍しています(この場合はマイコンと呼ばれることが多い)。
設計時間の短縮と誤りの混入防止のため、現在ではディジタル回路の設計は、コンピュータの力を借りて
設計しています。それが「電子回路CAD(Computer Aided Design)」とか「EDA(Electronic Design Automation)」と
呼ばれている分野です。
どの世界に行っても電気製品はあります。何を作るにしても電気を使います。 「電子回路CAD」が使えるようになれば、どの分野への就職もバッチリですね。