物理学実験
Lab2: 力学実験とデータ解析

(企画担当:ハルトノ、実験室:電気電子工学実験室C)

オリジナルファイルは→こちら(20120731版)
PDFファイルは完了版に対して作成し掲載します。


物理学実験の実験題目2「力学実験とデータ解析」の実験指導書です。

1. 実験の目的

本実験では自由落下する物体の観測データから重力加速度の推定を行う。本実験を通じて、基本的な物理現象の観測方法、データの記録手法とそのデータに基づく物理定数の推定方法を学ぶことを主な目的とする。

2. 理論背景

ここでは物体を質点として扱い、その運動の様子を考える。質点の運動式(1)に示すニュートンの運動方程式に従う。
F=ma (1)
式(1)は、ある物体にかかる力学的な力F[N]はその物体の質量m[kg]と物体にか かる加速度a[m/s2]に比例するものであることを意味する。 また、ある物体が重力以外の他の外力を受けずに下の方に運動するとき、その物体は 自由落下をするという。

図1:質点の自由落下
図1は質量m[kg]を持つ質点の自由落下を示す。 自由落下する質点は重力のみを受けるので、その質点にかかる力Fは質量m[kg]と 重力加速度g [m/]によって決まり、負の符号は質点が下に方向に運動することを意味する。 式(1)から、この質点にかかる加速度は重力加速と同じであることは明らかである。 この事実から、質点が落下し始めてからの時間と速度および位置の関係を簡単に導くことができる。 先ず、加速度の意味を考える。加速度とは単位時間当たりの速度の変化、つまり時間の 変化に対しての速度の平均変化率であることに注意すれば良い。時間の変化を 限りなく短くとれば、加速度aは、式(2)で書くことができる。

atlim?→?? (2) (後日、式作成)

式(2)では、tは物体が落下し始めてからの時間を表し、v(t)は時間tにおいて の質点の速度を表している。式(2)では加速度も時間的に変化する関数として 書いているが、自由落下の場合はatgとなる。 次に、速度の意味を考える。速 度とは単位時間あたりの位置の変化、つまり時間の変化にたしての位置の平均 変化率である。時間の変化を限りなく短くとれば、t時間の速度v(t)は式(3)に 書くことができる。

vtlim?→? (3) (後日、式作成)

式(3)では、x(t)は時間tにおいての質点の位置を示す。 式(2)と式(3)から以 下に質点の位置と重力加速度の関係を得ることができる。

(4) (後日、式作成)

式(4)の両辺をtに関して積分した場合式(5)を導くことができる。

vt0 (5)

式(5)では、v0は質点が落下し始めた時間の速度、つまり初速度を示す。さら に、式(5)の両辺を時間に関して積分すると、質点の位置と時間の関係がわか る。

0 xt00 (6) (6)

式(6)では、x0は質点が落下し始めたときの位置を表す。初速度と初期位置をともに0とする場合、時間に対する位置の変化を式(7)で示すことができる。

xt (7)

上の説明ではニュートンの運動方程式から自由落下する質点の時間的な位置の 変化を導きることが明らかである。つまり、ここでは力学の理論から物理的な 現象を説明できることを示したが、本実験では逆に自由落下する物体と言った 物理現象を観測することにより、この現象を”支配”する理論(正確には物理 定数)を導くことを行う。

3. 実験方法

本実験で用いる器具は、図2に示す目盛付の落下台、ストップウォッチとボールである。

図2:落下台
実験手順を以下に示す。

一週目の実験

  1. ボールを200 cm, 190 cm, 180 cm, 150 cm, 140 cm, 100 cm, 80 cm, 50 cmの高さから自由落下させ、図2に示す落下到達点までの時間をストップウォッ チで計測する。
  2. この実験を学生の人数分だけ繰り返し、データを次の表(学生の人数が3人の場合)のように記憶する。
    表1:落下時間の観測
    学生1の計測学生2の計測学生3の計測平均値
    200cm
    190cm
    180cm
    150cm
    140cm
    100cm
    80cm
    50cm
  3. 各落下開始点において、落下時間の平均を有効小数点に注意して計算する。
  4. 時間を横軸、落下開始点を縦軸にグラフをプロットする(グラフ1)。
  5. 時間の二乗を横軸に、落下開始点を縦軸にグラフをプロットせよ(グラウ2)。
  6. TAの確認を受け、一週目の実験を終了する。

二週目の実験の事前課題

  1. 理化学年表などから重力加速度の理論値を調べよ。
  2. 最小二乗法に関して学習せよ。

二週目の実験

  1. 最小二乗法を用いて、グラフ1に示す実験データを適切な関数で近似し、そこから重力加速度の推定値を求めよ。
  2. 最小二乗法を用いて、グラフ1に示す実験データを適切な関数で近似し、そこから重力加速度の推定値を求めよ。
  3. 理化学年表などで調べた重力加速度の理論値と(1)(2)で求めた推定値を比較し、その誤差の理由に関して考察せよ。
  4. 本実験では、最大高さ200cmから自由落下実験を行ったが、同じ要領で高さ1kmの自由落下ができる思考実験を考える。 その時、どのような結果が予想できるかに関して考察せよ。また、この思考実験を地球の北極及び赤道で行ったときにはどのような結果となるかとその理由に関して考察せよ。
  5. 実験項目(9)〜(12)に関してTAの確認を受け、実験を終了する。

レポート課題

  1. 目的に照らし合わせ、本実験から学んだことに関する考察 (800文字)
  2. 一週目の実験項目(2)の表、項目(4)(5)のグラフ。
  3. 重力加速度の推定値を導く過程とその値。
  4. 重力加速度の理論値と推定値の誤差に関する考察。
  5. 二週目で考えたる思考実験に関する考察。
  6. より高い精度で重力加速度を求めるための別の実験の現実的な提案。

2012.08.01.
arranged by fmiso at sist.chukyo-u.ac.jp