Transistor Amplifier Circuit

実験:トランジスタアンプ


本実験では,トランジスタアンプ(増幅)回路について学びます.

増幅回路

入力した電圧や電流を大きくしたり小さくしたりして出力する回路 を「増幅回路」といいます.増幅回路に は多くの種類がありますが,本実験ではトランジスタを用いた電流 増幅回路を学びましょう. 前回行なった実験で,トランジスタは電流増幅素子として使われて いました.それも,スイッチのようにON-OFFのいずれかの状態にな るように動作させていました.このような動作をディジタル(動作) といいます.状態は2つに1つしかなく,その中間というものはあ りません.
一方,中間の値を持つような動作をトランジスタにさせることもで きます.このような使い方をアナログ(動作)といいます. 本実験ではトランジスタをアナログ動作させ,微小の振動を大きな 振動にする増幅器(アンプ)を作成します. 図1にトランジスタ増幅回路の例を示します.これはエミッタ接地 増幅回路とよばれており,広く使われている増幅回路です.

以下にこの回路の設計方法について述べます.
まずは直流設計を行ないます.
まず,ベースからエミッタへ流れる電流は十分小さいものとして無 視します.設計では,電源からRc,トランジスタ, Reへ流れる直流電流を0.5mA程度と定めま す(どの値でも良いですが,無駄な電力を消費しない程度). RcReに0.5mAの電流 が流れるので各々の抵抗で電圧降下が起こります. 電源電圧が5Vなので,これらにキルヒホッフの電圧則を適用する とトランジスタの両端電圧は3V程度になります. つまり,入力が無信号時には約3Vで,信号が入るとそれが変化す ることになります. 次に,トランジスタはベース・エミッタ間を0.6V程度に 保たないと動作しません.そのために抵抗R1R2で電 源電圧を分圧してベース電圧を定めます.エミッタ抵抗 Reの降下電圧1Vにベース・エミッタ間電圧0.6 Vを加えた電圧がベース電圧で1.6V程度になるようにします.

次に交流設計を行ないます.
交流設計は実際に入力信号が入った時にその信号が流れる経路に注 目して行ないます.すると,回路中の3個のコンデンサは交流信号 については短絡しているとみなすことができます. トランジスタの入力電圧に対する出力電圧の比Aを増 幅率といいます.そしてエミッタ接地増幅回路の増幅率は トランジスタのエミッタ側の抵抗とコレクタ側の抵抗の比 になります. 図1の増幅回路ではReRe1の 並列接続したものとRcの比になり,増幅率 Aは約20になります.


図1:エミッタ接地トランジスタ増幅回路(拡大図

このようにして設計されたエミッタ接地増幅回路は約20倍の増幅回 路として動作しますが,出力インピーダンスが大きいため出力接 続する負荷のインピーダンスが小さいと増幅率が減ってしまいます.
そこで,出力インピーダンスを下げるためにエミッタフォロアと呼 ばれる回路を出力部に追加します.エミッタ接地トランジスタ増幅回路は通 常コレクタから出力を取り出しますが,エミッタフォロアはエミッ タから出力を取り出します.回路的には増幅率1の増幅回路になり ますが,出力インピーダンスを下げることができます.スピーカな どの低インピーダンス機器を接続する時に必要な回路です.


図2:エミッタフォロア付きエミッタ接地トランジスタ増幅回路(拡大図


実験

実験に必要な部品

品名規格・型番個数
トランジスタ2SC18152
抵抗100Ω(1/8W)1
抵抗200Ω(1/8W)1
抵抗2kΩ(1/8W)1
抵抗3.9kΩ(1/8W)1
抵抗15kΩ(1/8W)1
抵抗33kΩ(1/8W)1
電解コンデンサ10μF(耐圧16V)2
電解コンデンサ47μF(耐圧16V)1
ユニバーサル基板1
スピーカ4〜32Ω1
3.5φジャックスピーカ接続用1
3.5φプラグ信号入力用1
電線・半田---少々

実験1

ユニバーサル基板上に増幅率20のエミッタ接地トランジスタ増幅回 路(図1)を作成せよ.入力には信号を加えない状態で各部の電圧 を測定し,設計値と比較せよ.

実験2

シグナルジェネレータから周波数1kHz,振幅0.1V以下の正 弦波を発生させ,設計した回路に入力し出力波形を観測せよ.
(注:シグナルジェネレータの出力ははじめ最小にし,波形を見ながら序々に上げること)

実験3

実験2の回路の出力端子にスピーカを接続して1kHzの音を観測 せよ.シグナルジェネレータの出力を変化させ,出力を大きくする とどのように聞こえたか,出力波形の形状も記録し報告せよ.

実験4

図2のエミッタフォロア付きトランジスタ増幅回路について実験2, 3と同様の実験を行なえ. このとき,Tr2のベース電圧とエミッタ電圧の波形を同時に表示させ 記録せよ.この波形からエミッタフォロアの動作を確認せよ.

考察

  1. 回路の定数(抵抗の値等)の設計方法について述べよ.
  2. シグナルジェネレータの出力を大きくすると,増幅回路の出力 波形形状に変化が現れる.このような変化が起こる理由について調 べよ.
  3. 回路中のコンデンサC1C2はなぜ必要なのか調べよ.

参考資料


2002.05.12.
fmiso@sccs.chukyo-u.ac.jp